++淡白な会話、裏腹な心境++
「もうっ、手がべっとべとのチョコまみれ」
(あ〜あ、せっかくの高級モノだったのに…何で素直に渡せないかなぁ…)
「お前がチョコレートを握り締めたまま中々渡さないからだろう?」
(どうにか貰ったが俺が取り上げた感が否めないのは気のせいだろうか…)
「う、うるさいわね。言っとくけどソレ義理だからね、カン違いしないでよ?
本命たっぷり貰ってるレイには義理でも十分過ぎるくらいなんだから」
(ホント、マジで貰いすぎ、焦るんですけど)
「本命…か、俺にはそういったものの見分けは全くつかないな」
(ルナマリアのチョコレートは本人が義理と言ってるから義理なのだろうが…)
「アンタがさっき部屋に運んでた大量の華やかでゴージャスなブツの半分以上は絶対に本命
そんなのラッピングとかの気合の入れ方みればわかるでしょ?まったく鈍いんだから」
(クールぶっちゃってさ!そーゆーとこ、ちょっとカッコイイとか思ってるなんて死んでも言わないからね!)
「鈍いなどとお前にだけは言われたくないんだが…」
(お前は俺の気持ちを考えたことがあるのか!?)
「なにソレ、どーゆーイミよ!?」
(うわっ!人の気も知らないでよく言うわね!)
「お前も相当に鈍いという意味だ、……ところでルナマリア」
(あまり言うと根に持つからな、サラっと言って終わらせておこう)
「むぅ〜、なによ〜?」
(鈍いって言われたの、ちょっと根に持ってやる…)
「このどろどろに溶けたチョコレートだが、一応俺にくれたものなのだろう?」
(半分もぎ取ったようなものだが、貰ったことに変わりはない!)
「そうよ、そのどっろどろに溶けてるチョコこそが私からの気持ちよ
華やかさもゴージャスさも微塵もないところなんて他の本命チョコと一線を画してるでしょ?
そのぐちゃぐちゃなのぜーんぶレイのだから、残さず食べてよね」
(あ〜〜!私ってどーしてこう可愛げのないことばっかり言っちゃうんだろ!!)
「…なら、そのお前の指についてる分も俺の分だろう?」
(この言い方、ルナマリアにどう取られるか、いや別に変な下心があるわけでは…!!)
「…うーん、そうね、一応そーゆーことにはなるわね
って、まさか律儀にコレも食べてくれるっての?
でも私、指とかって結構弱いのよね、だから舐められるのはパス」
(レイに指を舐められる!?無理!!そんなコトされたら恥ずかしくて死んじゃうってば!!)
「過去に誰かにされたことのあるような口ぶりだな」
(い、一体誰がそんな羨ましいことを…っ!お、おのれ…!!)
「さーて、どーでしょね」
(ホントはケーキ作った時にメイリンが指のクリーム舐めてきただけなんだけどね)
「じゃあ俺は溶け出してしまったチョコレートの分、損するわけか…」
(これ以上そいつに遅れをとるわけには…っ!というか指を舐めた奴ってのは一体誰なんだ!?)
「やーねー、単なる義理にそんながっつかないでよ。レイってばたくさん貰っておいて欲張りね」
(私のチョコ欲しいってこと?それとも単に甘党だったとか?レイって読めないわ…)
「たくさん貰ったとしても本当に欲しい人間から貰えなくては意味などないな」
(本人が義理と豪語してるチョコで満足するわけないだろ!)
「ふーん、そうなんだ、レイにもチョコ貰いたい相手っているんだ」
(う、うそ…っ、それってレイが誰かに片想いしてるってこと!?)
「まあ…な」
(だから相手はお前だと言っているだろうが、心の中でだが…)
「で、今年は貰えなかったの?」
(ちょっと、どーしよーっ!!貰ってたら両想いなんだけど…!)
「………微妙なところだな」
(本当に微妙過ぎて全くどうしようもない)
「へぇ〜、レイにもオトせない相手がいるんだ?意外〜」
(ちょ、もうダメ、ショック過ぎてワケわかんなくなってきた…!)
「そうか?」
(おい、だから相手はお前だとさっきから何度も…って全部心の中の一人言だったな…。虚しい)
「じゃあそんな可哀想なレイにもう一つ甘いご馳走をぷれぜんとしてあげよっかな〜」
(ヤバイ!ショック過ぎる!でも会話を切ると変だから何か話さないと…って私何言ってるのよ〜!?
これ以上プレゼントなんてないってば!ショック過ぎて思考回路が壊れたんじゃ…!?)
「何だ?」
(今、リボンでラッピングを施されたルナマリアを思い浮かべたなんて口が裂けても言えない…!)
「私、食べてみる?」
(って、はあぁあぁ〜〜〜!??私、何言ってんのおぉ!!?プレゼントが私って、おい〜〜!!
いくら思考回路ヤバくなってても、それはないでしょ〜!?)
「………は!?」
(な、何だ今の発言は、まさか俺の心を見透かしていたのか…!?い、いやそんなはずは…!!
落ち着け、とにかく落ち着くんだレイ・ザ・バレル!)
「指についたチョコのついでに私も食べてみる?今の私は部分的にチョココーティングされてるから甘いわよ
まるごとゼンブ食べればこの指のチョコもあんたの中に納まるでしょ
指だけ舐められるのはヤだけど、ゼンブならOKかな…?」
(も、もうダメだあぁーーっ!自分でもワケわかんないこと口走ってる!!錯乱するにもほどがあるって!
とにかくコレ、何とか全部冗談だって方向に持ってかないとヘンタイだと思われちゃう!
落ち着くの、とにかく落ち着くのよルナマリア・ホーク!)
「………………」
(落ち着け!落ち着け!落ち着け!こんな時は…そうだ!ピアノのことでも思い浮かべるんだ!
確かモーツァルトの曲にはリラックス効果などがあると聞いたことが…って無理だ!
今俺の心の中で激しく鳴り響いてるのはベートーベンの運命だ!落ち着くわけがない!)
「なーんてねっ。ちょーっとヤダっ、何固まってんの?あはは、レイってば変なのー
あんまジョーダン通じないとそのうちモテなくなっちゃうよ?」
(こ、これで何とか冗談っぽく出来たハズ!とにかく軽いノリで会話を終わらせるのよ!あと一息!)
「俺がルナマリアの軽口を真に受けるわけがないだろう、別に固まってなどいない」
(ルナマリア!世の中には言っていい冗談と悪い冗談があるってことを知らないのか!?)
「あ、私シンにも渡してくるから先に帰ってて〜。それじゃっ」
(お、終わった〜〜!助かった!でもレイの好きな人のこと全然わかんなかったよー!くうぅ…!)
「ふぅ…俺のリミッターが外れるのも時間の問題かもしれないな
まあ、そのときには元凶であるあいつに責任をとってもらうとするかな」
(それにしても、ルナマリアの指を舐めた奴ってのは一体誰だったんだ!まさかシン…!?)
皆沢タカコ
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